若尾歯科医院からのお知らせ

2012.11.15

今回お話すする内容は歯周病と全身疾患との関係についてです。

他のコンテンツの中でも何度か出てきた内容ですが少し掘り下げてお話ししたいと思います。

歯周病と聞くと最悪、歯が抜けるだけの病気、お口の中だけのトラブルという認識がされてきました。今でもそのようにお考えの方は多いかと思います。

最近の報告では、歯周病の悪化は他の生活習慣病をはじめとした様々な全身疾患に悪影響を及ぼすことがわかってきました。歯周病の原因となる細菌や炎症性物質は歯周組織から血管の中に入り込み全身に運ばれます。その結果お口から離れた様々な部位で悪影響が出ます。主に報告されているものは心疾患、脳梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産などがあります。

1.心疾患、脳梗塞

歯周組織から血管に入った細菌が血管壁に入り込むとその部分で動脈硬化を引き起こすことがわかってきました。動脈硬化がおこると血栓といわれる血流を低下させるものが血管内にできます。これが心臓で起これば心筋梗塞を引き起こしますし、脳で起これば脳梗塞を引き起こします。

2.糖尿病

歯周病の進行には細菌の感染、細菌が出す毒素、それによって作られる炎症性物質が伴います。炎症性物質とは細菌やウイルスに感染した時に好中球やマクロファージといった免疫を担当する細胞から出される物質のことを指します。例えば、(歯周病とは関係ありませんが)インフルエンザウイルスがのどから侵入すれば、熱が出たり、頭が痛くなったり、関節の痛みが出たりします。このような炎症を起こし持続させる物質のことを炎症性物質といいます。

歯周病の悪化によって出される炎症性物質の中にはインシュリンの働きを低下させるものがあります。歯周病によって持続的にインシュリンの働きが阻害されることで糖尿病が悪化します。また、糖尿病は感染を引き起こしやすくなるため、歯周病自体も悪化させます。糖尿病が悪化すればさらに歯周病が・・・というように負の連鎖が続きます。

3.誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは飲食物や唾液が間違って気管に入ってしまう誤嚥によって引き起こされる肺炎のことを言います。歯周病が悪化すれば細菌が入り込む量も増えるため、肺炎を起こすリスクが高まります。特に抵抗力の落ちたご老人の方や、寝たきりの方は注意が必要です。

4.早産・低体重児出産

歯周病によって出される炎症性物質の中に、プロスタグランジンといわれるものがあります。プロスタグランジンは主に痛みを起こしたり、熱を出したりする物質です。この物質には子宮収縮作用があるため重度の歯周病にかかった妊婦さんは早産になりやすいと報告されています。ちなみに陣痛促進剤にはこのプロスタグランジンが入っています。

以上、歯周病と全身疾患の関係についてお話しいたしました。歯周病が原因で直接死にいたるようなことはありません。しかしこのような怖い病気の引き金、悪化させる因子になっているとすれば軽視はできません。

歯周病の治療、継続的なメインテナンスは、お口の健康だけでなく全身の健康維持のためにも必要なことだとご理解いただければと思います。

 

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