今回お話しさせていただくのは歯科の二大疾患の一つ、虫歯についてです。
虫歯については虫歯の治療という項目で扱っておりますが、ここでは虫歯の原因について数回に分けて触れていきたいと思っております。
皆さんは虫歯というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?
このようなイメージでしょうか?
この絵に似た、ばい菌がつるはしや槍のようなものを持って歯を傷つけているキャラクターの絵を見たことがある方も多いかと思います。小さなお子様に虫歯のことをお話しするときは、このような絵を使って”ばい菌をやっつけようね”とお話しすることもありますが、厳密にいうとこの絵は間違っています。
実は虫歯というのは様々な要素がからんで生じています。
①虫歯の原因となる細菌
ストレプト・コッカス・ミュータンスという細菌の名前を聞いたことはあるでしょうか?この呪文のような名前の細菌は虫歯の原因となる細菌の代表です。このような虫歯を作る細菌はお口の中に常に無数に存在しています。虫歯の原因菌は槍やつるはしを使って歯を攻撃するのではなく、細菌が糖分を代謝して排出される酸によって歯を溶かします。
②細菌の塊、プラーク
お口の中の細菌は、単独でいると簡単に唾液に流されたり、食べ物と一緒に流されてしまいます。そこで、何とかしてお口の中にとどまろうとします。細菌は仲がいい者同士が集まって、集落を作ります。歯の表面を舌で触るとヌルヌルした感じがありませんか?このヌルヌルしたものが細菌の集落です。歯垢と言ったり、デンタルプラークなんて呼んだりします。虫歯の原因となる細菌は常に歯の表面にプラークを作って存在しています。プラークは歯ブラシなどで磨かない限り落とすことはできません。身近なところでは排水溝でも似たようなことが起こっています。排水溝のヌメリは細菌の塊です。あれがプラークです。水を流しただけではヌメリは落ちませんよね・・・。お口の中も同じです。
プラークを落とさない限り細菌は持続的に酸を作り続けます。そして歯を溶かします。だから虫歯の予防には歯ブラシが重要なのです。
今回は虫歯の原因について、細菌のことを中心にお話しさせていただきました。
今回の話をまとめると
・虫歯は細菌が糖を代謝したときに出てくる酸によって作られる。
・虫歯の原因菌は常にお口の中に存在している。
・虫歯の原因菌はプラークという集落を作る。
・プラークは歯磨きなどで機械的に落とさないと付着し続ける。
・プラークを除去しないと酸が作られ続け歯は溶かされていく。
このままでは細菌にやられて虫歯だらけになりそうですが、我々は虫歯に抵抗する機能を持っています。それを代表するのが唾液であり、再石灰化といわれるメカニズムです。
次回は虫歯に対する防御機能を中心にお話しさせていただきたいと思います。